オフィスの野獣と巻き込まれOL

「最初の水割りのお代だけ頂くわ。後は、おじ様たちが喜んで払ってくれるから」

ママが嬉しそうに言う。

「だから、これに懲りずに。また、いらしてくださいね」

「はい」キモは、素直にうなずいた。

ママは、出口のところまで私たちを見送ってくれた。

足元がふらついた私を見て、ママがとっさに声をかけた。

「祐一、ちゃんと送ってあげなさい」

「あっ、ああ」

ん?なに、今の。

キモがぐいっと腕を引っ張ったので、私はママの顔を見る事が出来なかった。

ママは、『ちゃんと送ってあげなさい』
って言ってた。

客相手に、そんな言い方するのも変だけど。

『祐一』って名前まで言ってた。

「課長って、前にあの店に、行ったことあるんですか?」

「まさか、俺が行く訳ないだろう」

酔っていたし。

それ以上にキモが、私の質問に答えてくれるとは思えなかった。

私は、キモに早く乗れと言わんばかりに、タクシーに押し込められた。

キモはそう言い残すと、きちんと私の家まで送ってくれた。

私の手には、くちゃくちゃになった別の伝票の原本が手に残されていた。

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