オフィスの野獣と巻き込まれOL
しかしまあ。
経理部の帳票類だから、資料は数字だらけだ。
帳票のタイトルが無いと、何の帳票だかわからない。
山科君は、堀川課長の指示を一回聞いただけちゃんと理解して、役に立っている。
凄いなあ。頭の違いが凄まじい。
やっぱ山科君、仕事出来るんだなあ。
こんなものを一日眺めていて、頭が痛くならないのか。
どうやら、堀川課長は人使いが荒い。
「いや、おかしいのは、経費の誤魔化しなんてレベルじゃない。
過去三期分の決算数値を見てみろ」
せっかく調べ上げたメモを、容赦なく突っ返す課長。
「はい」
山科君は、文句も言わずに引き下がる。
「どうした?見方が分からないのか?」
堀川課長は、相手が理解してないと思うと、丁寧に対応した。
「あの……会社の重要な帳票類には、俺たちのような一般社員は、関わらせてもらえなくて」
「関わらせてもらえなくても、この会社は一部上場企業だ。
経営判断に必要なデーターはすべて公開されているはずだろう?」
「はい」山科君、申し訳なさそうに答える。
「ここでは、伝票に印鑑を押すことしか押してもらってないのか?」
「すみません」
「もういい。損益計算書の見方を一から教えるからよく聞け。
いいか?まずは、こんなふうに数字の流れを細かく追え」
課長が山科君に丁寧に指導してる。
二人で仲良く、頭を付き合わせて山科君の質問に、堀川課長が答えてる。
「本当だ。損益計算書では、利益がちゃんと出てるのに、キャッシュフローは赤字だ。一体どうなってるんだ?」
「会社の金が、どこかで流れ出てる」
「どういう意味ですか?」
「どこかに不自然なところがあるはずだ。それを見つける」
「はい」