オフィスの野獣と巻き込まれOL
「君が、謝る事じゃない。
君ががこの工場を、法外な値段で買うって判断した訳じゃないだろう?
むしろ、こうして状況を心配して知らせてくれたことは、すごく有難い。
本社で経理を預かる人間としては、お礼を言わなければいけない」
本社に上がってくる情報を拾い上げたのは、亜美だ。
彼女の直属の上司に渡さないで、山科君に渡してくれたのだ。
だから、一番のお手柄だったのは亜美という事になる。
「止めて下さいよ。課長にそんなふうに言われても」
その様子を見て、山科君も課長の前で頭を下げた。
「いや。正直言うと、会社のこと、こんなに真剣に、社員が考えてくれているとは思っていなかった」
「課長、そうおっしゃいますが。
やはり、謝るのは俺の方です。
まったく会社の状態のことを、知らないわけじゃなかったんですから。
去年あたりから、いろんな部署から、噂が耳に入ってきました。
1つ1つの声を拾い上げて、ちゃんと聞いてあげれば、もっと早く分かったのに。
こうなる前に、防げたかもしれなかったのに。声を上げる勇気がないばかりに……」
山科君は、悔しそうに言った。
「防げるかどうかは、まだわからないだろう?うまく切り抜けられるかもしれん」
堀川課長が、バシンと山科君の肩を力強く叩いた。