オフィスの野獣と巻き込まれOL


工場と言えるのは、管理事務所の裏にある、ぼろいトタン屋根の建物だけだ。

規模も大きくはない。

これだけだと、その辺にある町の工場とそれほど変わらない。

それが、169億円って。

うちの会社は、この程度の施設に169億円のお金を払ったのだ。

「これは、現実なのか……」

図面を覗き込んでいる山科君の表情が厳しくなっている。

「社員が一生懸命に働いたって、こんなところから、お金が漏れてるなんて……」

山科君が悔しそうに言う。

課長は、敷地を見て回る間、言葉を発せずにずっと黙っていた。

橋本さんが、不機嫌そうにしててる課長を気にして、ちらちら見いた。

課長の表情を読もうと思っても、らちが明かないので、私に答えを求めようとしてきた。

後で、橋本さんに話しておこう。

気持はわかるけど、課長の前で説明する訳には行かない。


課長が黙ってるのは、橋本さんではない。

多分課長は、こんな契約をして、会社にダメージを与えた経営陣に怒っているのだ。

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