オフィスの野獣と巻き込まれOL
彼は、料理の方はあまり手を付けず、ゆっくりお酒を飲んでいた。
雰囲気の方を楽しんでいるように見えた。
「料理、口に合わなかったの?」
課長の好みはどう見ても洋風だった。
だから、興味本位で食べなれない料理を頼んでしまったのか。
それで、あまり手を付けないのか気になった。
和食や中華も食べるけど、自分から食べたいと言い出したのは、これが初めてだったから。
「いや、うまそうだとは思うけど。口にするのは、もったいなくて……」
器を手に取って、そっと顔に近づける。
「こんなにいい匂いだし」
汁椀の香を楽しみながら、おつゆを一口すすった。
「どれも、本当にきれい」
私も彼と同じようにして、手元に近づけた。
料理を盛り付ける器も凝っていて、見た目も楽しめる。
「口にしたら、どんな感じになるのか楽しみだな」
彼が、鋭い射貫くような目で見つめた。
獲物を逃さない、鋭い目だった。
もう、器の方を見てはいなかった。