オフィスの野獣と巻き込まれOL


彼は、料理の方はあまり手を付けず、ゆっくりお酒を飲んでいた。

雰囲気の方を楽しんでいるように見えた。


「料理、口に合わなかったの?」

課長の好みはどう見ても洋風だった。

だから、興味本位で食べなれない料理を頼んでしまったのか。

それで、あまり手を付けないのか気になった。

和食や中華も食べるけど、自分から食べたいと言い出したのは、これが初めてだったから。


「いや、うまそうだとは思うけど。口にするのは、もったいなくて……」

器を手に取って、そっと顔に近づける。

「こんなにいい匂いだし」

汁椀の香を楽しみながら、おつゆを一口すすった。


「どれも、本当にきれい」

私も彼と同じようにして、手元に近づけた。

料理を盛り付ける器も凝っていて、見た目も楽しめる。


「口にしたら、どんな感じになるのか楽しみだな」

彼が、鋭い射貫くような目で見つめた。

獲物を逃さない、鋭い目だった。

もう、器の方を見てはいなかった。
< 218 / 349 >

この作品をシェア

pagetop