オフィスの野獣と巻き込まれOL
「いい気持ち」枕を占領してゴロンと寝返りを打った。

もう、なにもいらない。

眠りに落ちる寸前だった。グワンとベッドが沈み込んだ。

「ん?」

「もう少し、そっちに行け」

ベッドの真ん中でゴロンとしていた私を、誰かの腕が押しのける。

「誰?」すぐ横に人がいた。

私は追い出されまいと足で踏ん張って、自分の場所を死守する。

「しょうがねえな」

ずしんと体の上に漬物石が乗っかったみたいな衝撃を覚える。

「ぐえ……」

ホテルの薄暗い部屋の中でようやく目が慣れてきた。

キモが、シャワーを浴びてたのをおぼろげながら思い出す。

「あら、もう戻って来たの」

一生、バスルームから出てこなきゃいいのに。


「髪が臭いって言われたからな。きれいに洗い流してきたぞ」髪に指を通して、私に見せた。

「私、そんなこと言った?」

「もう、忘れたのか。まあ、どうでもいいけどな。そんなこと」

ペったりと固定されてた髪は、きれいに洗い流されていた。

ホテルのシャンプーでもきれいに落ちるなんて、驚きだ。

確かに。さっきのヘルメットは跡形もなく消えてる。


かわりに、ふさっとした黒髪が現れていた。

きれいにカットされ、本来の姿に戻って前髪を作っている。

今時の男性が、目の前に現れた。

しかも、バスタオルを巻いたまま、ガッチリとした胸板に滴を滴らせている。
< 23 / 349 >

この作品をシェア

pagetop