オフィスの野獣と巻き込まれOL
こういう時、何も出来ないのは本当に無力だ。

「私は、向こうに移動しますから」
パソコンの電源を落とそうとした。

せめて二人で話しやすいように、私は席を移そうと思ったのだ。

「待て。ここにいれば、いいじゃないか」

課長が足を伸ばして、私の行く手を邪魔する。

「ん?」

なんてことするのよ。
躓きそうになったじゃないの。

マウスを握っている手が、ふわっと何かに包まれる。

あったかい。

課長の大きな手が、私の手を上から覆っていた。

「ここに居ろ。遠くに行くな」

私にだけ聞こえるように、彼にしては小さな声で言う。

「ここにいたら、邪魔ではありませんか?」

私は、山科君にも聞こえるように言う。


山科君が堪え切れず、笑い出した。


「全然、邪魔じゃないよ。
男二人じゃ息が詰まるし」

山科君は、器用に作業を続けながら言う。

そのやり取りを聞きながら、課長がぎゅっと手を握って来た。
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