オフィスの野獣と巻き込まれOL
今度はどこにキスされるんだろう。
そればっかりに集中してると、いきなりむぎゅっと心臓ごと捕まれるみたいに、胸をわしづかみにされた。
「だめだって?もう一度言ってごらん」
「だめ……」男がくすっと笑って、キスをした。
「だめ、じゃないだろ?キスされるの好きなくせに」
「ん……」キスを雨のように降らされて、どうにかなりそうだった。
キモが笑ってる。
笑うと、憎たらしいくらいいい男だ。
「ごめんな、おれ据え膳は、有難くいただく方なんだ。
だから、せめて、楽しんで。気持ちよくさせてあげるから……」
彼が、私のショーツを指でクルクルと回して弄び、ポイっと床に放り投げた。
堀川祐一、経理部課長。
仕事一筋、面白みのない、社内でも目立たない男のはずだった。
仕事中は、これにダサいメガネと、黒いアームカバーをつけている。
フロアを見ればすぐ彼だとわかる。
どこにでもいる、真面目が取柄のサラリーマン。
仕事中たいていは、自信なさげに下を向いている。
『おはようございます。堀川課長』
『ああ、おはよう』話しかけた時の、下を向いたままのオドオドした態度。
どれをとっても、女性慣れしてない。
冴えない男のはずだった。
一晩ホテルで一緒に過ごしても、無害だって言われてたのに。
それなのに。こんなに優しくキスするなんて。
こんなに熱い目で女性を抱くなんて。
本当に、これが、さっきまで目の前にいた人?
無表情で、無反応で面白みのなかった人?
信じられない。
「体大丈夫、辛くない?
力、入れないで、リラックスして。いい子だから、俺に任せて」
切羽詰まった声が耳元でしてる。
聞いたことのない、そそられる声だと思った。
反則だ。耳元でこんな声でささやかれたら、抵抗できない。