オフィスの野獣と巻き込まれOL
「だったら、引っ越さなくてもいいのに」祐一さんが、大真面目に言った。
武子夫人が、私の方をちらっと見て微笑む。
私もつられて微笑み返す。
そういうことは、奥様になる方に確認した方がよくないですか?
彼は、部屋の中をぐるっと見回した。
「別に気にしないよな。
これだけ広い家だし。顔を合わせないようにしようと思ったらそうすればいい。な?」
な?って何ですか?
私に同意を求めてどうするんですか。
「はあ」私は気のない返事を繰り返した。
どうして私に、同意を求めるのよ。
こことは、関係ない人間なのに。
「そうねえ。考えておこうかしら」
武子さん、まるで少女のように嬉しそうに首をかしげてる。
「それに。銀座の俺が住んでるマンションは、いずれ貸しに出すよ。
家賃収入だけでもバカにならない」
祐一さんは真剣な顔で言う。
「さすがしっかりしてるわね」
「まあね」