オフィスの野獣と巻き込まれOL

昼間は、山科君のやさしさにほだされて、全部話をする気になったけど。

自分の恥ずかしい部分をいくら友人だとしても、男性に話してもいいものかという気になって来た。

帰りの時間が近づくにつれて、やっぱり話すのは、止めておこうという気になって来た。

さっさと山科君に、断りの電話を入れよう。

エレベーターが1階についたら、電話をかけよう。

いや、ロビーに出たらかけようと思って、携帯を手にしていた。


扉が開いて、外の様子が見えたあと、私は、思わず息を飲んだ。

中に入ってこようとした男性の顔を見て、頭がフリーズした。

私は、エレベーターのボタンを押したまま、機械が故障したみたいに立ち止まる。

その男は、私に気が付かず通り過ぎようとしている。

心臓が止まりそうになった。


「ああっ、きっ……」何でこんなところにいるの!

「失礼、乗ってもいいかな?」一瞬だけど、彼としっかりと目が合った。

「ええ、どうぞ」見られてると思うと、顔の筋肉が自由にならなくて、指に力が入らない。

小鹿みたいに足が震えてる。


心臓が……

今にも飛び出して行きそう。

「堀川課長……」ようやく、名前を口にする。

「どうも」彼は、扉を押さえていた私にお礼を言って、中に乗り込んで来た。

それだけ?

エレベーターには、私の他に誰もいないのに。

声もかけてこないなんて。
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