オフィスの野獣と巻き込まれOL
私の顔を見て、もっと驚いたのは堀川課長の方だった。
彼は、まるで幽霊でも見るように、私のことを見ていた。
「なんで、こんなところに?」
私に声をかけたことなんか、忘れたみたいに声をなくしていた。
「えっと、そんなに怖がられても、私ちゃんと生きてますけど」
ジョークを言っても、彼は、無反応だった。
私の顔を見て、死ぬほど驚いていた。
死んだはずの人間が、ゾンビになって生き返ってきたくらいの反応だった。
さっきまで顔色をなくしてしまうほど驚いていたのに、キモは、いつの間にか正気を取り戻していた。
ぶるっと頭を振ると、私に向かって命令するみたいに言う。
「ファイルを持って、こっちに来い」
彼は、逃げ出さないように、しっかりと私の肩を捕まえていた。
彼は私を捕まえたまま、フロアの隅にある会議室まで連れて行った。
中に入ると目がちかちかした。
会議室は、天井の蛍光灯がこうこうとついていてた。
机の上にはさっきまで使っていたパソコンと、たくさんの資料が散乱していた。
彼は、ここで仕事をしてキャビネットをうろつく不審者に気がついたのだろう。
会議室に人がいるなんて考えもしなかった。
だって。
フロアには誰もいないのに。
なんで会議室なんかに籠ってるの?
泥棒なんて、慣れない行動をとる時って、予測できないことが起こるものだ。
まあ、とにかく私の計画は失敗だった。
キモに見つかってしまったのだから。