オフィスの野獣と巻き込まれOL

はあ。
どうしよう。いきなり本人が現れるとは。


バタンと部屋のドアを閉めるとキモは、

「信じられない」とか「まったく」と言いながら何度も舌打ちした。

実際には、もっとひどい言葉も聞こえてきた。

散々、独り言をつぶやいた後彼は、私に対する怒りや戸惑いを、顔に出さないように押え込もうとしてるみたいだった。

そして、彼は私の顔を見ないように背を向け、腕組みしながら考えている。

納得するまで私に向かって悪態をつくと、キモはくるっとこっちを向いた。


今日もやっぱり、七三分けの髪に、ダサ眼鏡。身体にあってない、ダボっとしたスーツの彼。
外見上は、はっきり言ってダサい。

まあ、確かに。

仕事のできそうな外見の男性が、こんなふうに会議室にこもって作業をしていると、どうしても目立ってしまう。

けれども、アームカバーにダサ眼鏡のおっさんが黙々と伝票を調べていても、ご苦労様としか言われない。

そばにいても、すぐ横を通り過ぎても彼のことを見逃してしまうだろう。

一見、影の薄い人間のように思われる。

同じ部屋に二人で居たって、まるで害のないタイプに見えるのに。

まさか。こんな姿の男に心を動かされるなって、思っても見なかった。


でも、この人は、見かけとまるで違う中身をしている。

あのスーツの中身がどうなってるか。

しなやかな肉体が、無駄のない動きをするのだと思うと、冷静ではいられなくなる。

彼だと気が付いた時から、私は緊張しっぱなしだった。

あの……

頭に手をやって、考え込むようにしている彼。

指の、しなやかな動き。

腕から首筋までの完璧なライン。まさしく、よだれものだった。
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