オフィスの野獣と巻き込まれOL

「ええ、庶務課の成田です。
経理部からは、仕切りで区切られていて見えませんけど。同じフロアですから。
私、時々課長の事、お見掛けしますよ」

「そうだったのか……」ごほんと咳払いをして顔をそらした。

キモは、両手で覆って顔を隠している。

再会した事、よっぽどショックだったのだろうか。

「どうかしたんですか?私に酷いことをしたって、謝罪するなら聞きますよ」

「謝罪だと?誰に謝罪するっていうんだ?」

彼は、すぐに顔を上げて大真面目に言う。

「あのねえ、あの時の態度は、言っちゃ悪いけど最低だったわ。
まさか、あんな態度を取っておいて、自分では立派な行為だったと思ってるんじゃないでしょう?」

彼は、すまないと謝罪するどころか、ああなったのは、私のせいだと言わんばかりに向かってきた。

「俺は、一つも強制してない。君は、好きで俺についてきたんだろう?
謝罪しろなんて的外れだ」

まあ、なんて図々しいんだろう。

七三分けで、いっそのこと自信のない男のまま、大人しくしててくれればいいのに。


「そんなことより、ここで何してたんだ」

彼の手がすっと、胸元に伸びてきた。


「ちょっと、調べ物……ちょっと!」私は思わず飛びのいた。

こ、こんなところで、何する気?

彼の指先を警戒しているすきに、胸に抱えていたファイルを持っていかれた。
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