オフィスの野獣と巻き込まれOL
「このファイルが、どうかしたのか?」
「いいえ。どうもしません」どうしたのなんかなんて、絶対言うもんか。
狼狽えてた様子など忘れてしまったみたいに、彼は、すっかり冷静さを取り戻していた。
ファイルを開いて、パラパラと中身を眺めている。
ファイルの中身は、領収書やレシートが貼られている。
もう少しだったのに。
あと少し、時間があれば、コピーして、何事もなかったみたいに帰ることができたのに。
私は唇をかんだ。
ファイルを見ながら、彼が言った。
「なら、これは俺が戻しておくから。とっとと帰れ。ご苦労さん」
「ちょっと待って。それじゃ困るんだけど。えっと。その……まだ用事が済んでないの」
「だから、なんの用だって聞いてるんだ」
彼は、ファイルを盾に上から目線で尋ねる。
「ど、どうして、あなたに理由を言わなきゃいけないの?」
「忘れたのか?俺は、経理部の担当課長だ」
「別の部署の人間だって、し、資料くらい見たっていいでしょう?」
苦し紛れに言う。
多分、理由がなければ許可は下りない。
夜にこうしてきてる理由もそれだ。