オフィスの野獣と巻き込まれOL
「綿貫専務?えっと……」女の子は、急に興味をなくした声で聞き返してきた。
「ええ」彼女の様子からして、ここの客じゃなさそうだ。
「ちょっと待ってて」
女の子は一応、店の奥に行ってこの店のママに聞いてくれた。
彼女は、店のママとしばらく話をすると、すぐに戻って来てくれた。
「ごめんなさい。綿貫さんっていうお客さんは、来てないみたい」
「そっか。お店間違えたのかも。ごめんなさい」
丁寧にお礼を言って、店を出た。
「なるほど。そうやって回ればいいのか」キモは感心していった。
「さあ、次に行きましょう」私たちは、5階のフロアで探している店を見つけた。
義彦君の名前を出すと、すぐにこの店のママらしき女性がやって来た。
「いらっしゃいませ。まあ、綿貫専務の会社の方?」
「はい」
「すぐに、お席のご案内させていただきますね」
一目見て、この女性だと思った。薄紫の上品な着物を着て、髪をきれいに結い上げた女性だった。
切れ長の目のすっきりとした日本的な女性。義彦君の好みの女性だ。
私と、それほど年の変わらない年齢の女性。
「これですか?」奥の席に案内され、ボトルを見せてくれた。
「ええ、これで大丈夫だと思います」
義彦君がキープしていたお酒は、どこにでもあるような安いウイスキーのボトルだった。
私は、そのウイスキーの瓶を見て少々不安になった。
義彦君が入れたにしては、安すぎる。
彼は、本当にこの店に来たんだろうか?