可愛い人。


「いいよ、消さなくて。……可愛いんだから。」



「……っ!」




彼の綺麗な手が、私の手に触れている!



それだけで心臓が飛び出そうなのに……。




「消すなんて勿体ないし。」



「…………。」



「このままでいいよ。」



「…………。」




そんな穏やかな声で私に語りかけてくる山崎くんに、自然と熱いものがこみ上げてくる…。





私のこと、




嫌ってたんじゃ……ないの………?






そう心の中で彼に問いかけた。




けれど、返ってくるのは私には向けたことがない彼のはにかんだ笑顔だった!



夕日のせいか、頬が少し紅潮しているようにも見える…。




その光景はため息が出るほどに美しくて、


私は涙が零れるのをわかっていたけれど、彼の笑顔につられるように小さく目を細めて微笑んだ…。




すると今まで止んでいた風が急にざあっと吹くと、私の長い前髪がサラッと視界から退く。





「ありがとう…。」



「……っ。」



風に背を押されて山崎くんにお礼を言うと、なぜか目を見開いて彼がこちらを見ていた…!




???




ど、どうしたんだろう…?





そう思った瞬間だった。





急に山崎くんが席から立ちあがると両手を机について、体を屈めて覆いかぶさるように近づいてきた…!




「…………。」



「山崎…く……?」




な、何っ!??




なんだかどんどん近づいてきてるっ!??


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