可愛い人。
キス
山崎くんの突然の行動に戸惑いを隠せないでいた!
けれど、なぜか彼から目を逸らすことができない!!
「野呂。」
「…………。」
「嫌なら、逃げて…。」
「…………あ…の?」
何のことだか解らずにいると、段々と彼の端正な顔が視界に広がっていく…!
そして見たこともないような真剣な表情に思わず息を止めてしまうっっ!!
どうしてか解らないけれど、
山崎くんがなんだか知らない人みたい!!
普段クラスの中に溶け込んでいる彼の姿はいくつも見てきたけれど、
今回のこの私に向けられる眼差しは艶めいていて、やけに大人っぽい!!
その色香にあてられたのか、どうすることもできずにただ固まっていた!
そして……。
「――ッ!!??」
山崎くんはそっと私の左眼にキスをしてきたっ!!
その柔らかくて温かい感触に思考回路が完全に停止状態になる!!
長いようで一瞬の時間が二人の間に流れて、そしてそれはゆっくりと遠のいていく…。
…………………。
…………。
今のって……。
キス……?
だよね…?
!!!!
「あのさ、俺、」
「――――!!!」
ガタンッ!!
私は何かに弾かれるようにその場から立ち上がると、鞄を持って一目散に走り出したッ!!
バタバタバタッ……!
「はぁ。はぁ。はぁ。」
大袈裟なほどの足音が辺りに響きわたり、行き交う人達がこっちを見て通り過ぎていく…!
それでも今の私には気にも留めなかった。
気にする余裕がなかった。