臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「意味わかってます?」

私は“社長がダメ”って事と、“副社長の息子を勧められた”としかいってないんだけど。

「うん? わかってると思うが……」

……と、社長がいいかけた時、するりと静かに着物姿の女性が間に割り込んできた。

「お久し振りです、隼人さん」

あだっぽく、でも繊細に結い上げた長い黒髪。肌は陶器のように白くキメ細やかで頬は綺麗な朱色。

小さくて品のある唇は鮮やかに紅い。

清楚で美しい大和撫子が目の前に咲いたけど、視線は身に付けている着物に向かってしまった。


空色に近い薄い青色に、色鮮やかな蝶々と……金龍?


え。峰社長……どういう趣味……。


「お久しぶりです、峰社長」

少し堅い無表情を見せながら、一瞬視線が絡まる。


うん。私の出番だよね!

ここは冷静な秘書の出番かな。それとも……と、考えて、方針が決まった。

無言で社長の隣に立つと、彼の腕に手をかける。

それに気がついた社長が微かに驚いたように私を見下ろし、峰社長の眼が一気に冷たく燃え上がったような気がした。


ぅわあ。恐い。美人の怒った顔って恐い~!

でも、ここで負けちゃいけません!


「秘書の西澤と申します。初めまして、峰社長」

にっこりと出来るだけ華やかな笑顔を向けると、峰社長の表情もほころんだ。

まさに花が咲いたという形容が相応しいんだろうけど、極寒の大地に咲き誇る大和撫子に寒気しか覚えない。
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