臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「とにかく。それはあなたの胃袋に納めてください」

「わかった」

素直に料理をパクつく社長に溜め息をついた。

……何て言うか。社長って本当に素直だよね。

これが天然とか云うのかな?

そうだ。そうに違いない。


そうして食べ終わった皿をウェイターさんに渡すと、社長は背の高いスマートなフルートグラスを差し出してきた。

中味は微かに琥珀色で、気泡がシュワシュワと上がってる。

「少しは飲めるんだろう?」

「ありがとうございます。そうですね……そんなに強くはないんですが」

人が近づいて来ないのを幸いに、自然と壁寄りに立ち、二人でグラスを傾けた。

こういう祝賀会パーティーは、裏方仕事でしか参加したことがない。

会場の手配に、出す料理の再配、会場によっては秘書がウェイター役にまわるし、当日の受付は間違いなく秘書の役割。

その他、会場内で問題はないかどうか、目立たないところに控えていたり……。

そう、衝立の奥とか。

入口付近のパーテーションの脇に、詩織と春日井さんの姿が見えた。

詩織と視線が合ったから軽く手を振ると、春日井さんには殺人的な視線で睨まれる。


……うん。怖いから忘れようかな。

その方が精神的にダメージ少ないと思うし。

「片方はわかるが、もう片方は知り合いか?」

静かな声に彼を見上げた。

「同期の成田詩織です。仲良くさせてもらっています」

「そうか。同期うちで仲がいいのはなによりだ」

そう言っている社長に、どこか自嘲めいたものを感じる。
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