臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「だから、その意味を教えろ」

「嫌です~。重い重い! 人の上にのし掛からないでください!」

「お前がうつ伏せてるからだろ?」

「起き上がりますから、よけて下さい!」

ふっと重みが無くなったから、勢いよく起き上がると、思っていたより近くに社長の顔が見えた。


……あ。ヤバイ。めっちゃいい笑顔だ。


目を見開いて固まった私を見ながら、社長が乱れた髪を整えてくれる。

「ああ。そうか。お前は実は照れ屋ってヤツなんだな?」

「あ……ぅ……」

そんな分析しなくていい!

しなくていいから、視線を外して欲しい。

外して欲しいけど、見ていたい。

見ていたいけど、怖い。


……怖い?


「……坊っちゃん。女性をからかっていると、後で痛い目にあいますよ」

ナイスフォロー小杉さん!

そうです! 女性をからかってはいけないんですよ!

社長の視線が彼に向き、それから離れていった。

「女性の心理は昔からわからないな」

「坊っちゃんは女運が悪かったからですしねぇ」

仲の良いやり取りを見ながら、止めていた息を復活させる。

全く、この人……からかうのを楽しんでるんだろうな。

溜め息をついて窓の外を眺めると、藍色の空がどんどん明るくなっていく。


きっと今日も暑くなるだろうなぁ。


そんな事を思いながら、静かになった車内と、心地よいエンジン音に揺られ始める。


そして……。




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