臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
考えてみなくても、こんな偉そうな秘書はいないと思うなぁ。

それを普通に受け流す社長もいないだろうけど。

パタンとファイルが閉じた音がして、パソコン画面を見ると終業時間が過ぎていた。

「ガッツリいろいろ食べにいきましょうか」

パソコンの電源を落として立ち上がると、社長がコーヒーカップを置いたから、近づいてそれを持ち上げる。

「チェーン店の居酒屋は行ってるなら、下町の居酒屋はどうです?」

「下町か。通ることはあるが、行ったことはないかな」

「なら、初体験ですねぇ」

カップを持って給湯室に向かうと、何故か社長も着いてきた。


……なんだろうな。


「なぁ、美和」

「何ですか?」

腕捲りしてカップを洗っていると、背後に社長の気配がする。

「……社長?」

首だけ振り返ると、僅差数センチという間近に社長の身体があって固まった。

「小さいなぁ……お前は」

彼が話す度に吐息が肌をかすめていく。

「しゃ……社長?」

コーヒーの香りに気がついて、声が裏返った。

近い……近すぎる!


「お前は男に興味ないのか?」

……と言うか、こんな熱まで感じられそうな近さで言われても。


何が? どういう?

こんな体勢じゃ、まともに考えられないと思うよ。

さぁ、勇気を出して動け私、幸いにも首しか振り返っていないんだし、カップは泡だらけだ!

だけど、背後に人がいるのに背中を向けるって、あまりに無防備過ぎないかな?
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