臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
手早くカップの泡を落とし、水切りごに伏せて置くと、ハンカチで手を吹きながらくるりと振り返る。

「ご飯を一緒出来そうな人が来たみたいなので、私は帰らせて頂いてもいいですよね?」

「一応、聞いてる風を装って断言してるだろ。けど、それはないだろう? 何が悲しくて従兄弟の面を見ながら飯を食うんだ」

「私の顔見ていても、ワクワクしないでしょう」

私は社長の顔見てたらワクワクするけど、それはそれだ。

だけど社長は首を傾げ、無言で私を眺めると、眉を寄せた。

「いや。案外楽しいな。お前は仕事以外はコロコロ表情変わるから、見ていて飽きない」

「飽きないはひと言余計です! それにそんな甘い台詞は自分の本当の彼女に言うべきです!」

「それは甘い台詞か?」

「君の顔を見ていたら楽しい……なんてどこのキザ男ですか」

「そんなつもりは無いんだが。そうか、気を付ける」


うん。あなたはいったい、何をどう気を付けるつもりなんだ……。


思わずあんぐりと社長を見上げたら、孝介さんがいきなりしゃがみこんで爆笑を始めた。


あ。彼の存在を忘れていたかも……。


「親父が言っていたけど、確かに仲がいいねぇ、二人とも。でも、それは余り人前でやると、うちの会社、ますます“大丈夫か?”って心配されるからやめておけよ?」

社長がムッとして彼を見下ろすと、孝介さんは涙を拭きながら立ち上がる。
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