臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
とりあえず何が“特殊”なのかはわからないけど、本気で“近づくな”と言っているのはわかったから頷いた。

それから二人並んでエレベーターホールに向かうと……珍しく残業中らしい春日井さんに睨まれる。

スルーして地下駐車場に行くと、お迎え小杉さんにニヤニヤされながら下町まで送ってもらった。


「何度見ても、あの建物はビールジョッキにしか見えないですよねー」

「……ビールジョッキはねぇだろ。気持ちはわかるが」

昼間に見たら、金色ピカピカの四角いビルにはビールの入ったジョッキに見えるし、その脇には丸いフォルムの雲みたいなオブジェが見える。

ある意味で、シンボルマーク的なビル群を眺めてから、観光客も多い中を進んでいく。

「ところで、社長は暑くないんですか?」

「ん?」

会社の中や車内ならわかるけど、きっちり三つ揃えのスーツ姿は見ているこっちが暑苦しい。

「今から行くお店、あっついですから脱いだ方がいいですよ」

「男に着ているものを脱げとは、お前もスゴいね」

そういう意味じゃないですから!

「まぁ、さすがに冗談だ。それにしても陽が落ち始めてるのに暑いなぁ。いつまでこの暑さが続くんだろうな」

涼しい顔をした社長が、スーツのジャケットを脱ぐのを見守る。

……そんな冗談は、もっとオッサンになってから言って頂きたい。
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