臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
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「何だろう。よそよそしい気がする」

そう社長が呟いたのは、重苦しい雰囲気の役員会議を終わらせて、その後に和やかな幡中興業の社長と商談混じりの会食も終わらせて、小杉さんの車に乗り込んだ後だ。

最近はいつもの事のように「送るから乗れ」と言われたのに対して、否と答えたのが気にいらなかったらしい。

「気のせいではないですか?」

だいたい社長の車に乗って、先に家まで送ってもらえる秘書って如何なものだろう?

普通は社長を自宅までお見送りしてから、帰るものでしょう。
だけど、それだとちょっと大変。

社長のうちからタクシーで最寄り駅までというのは、毎日だとお財布事情が大変だし、社長の家の隣りに小杉さんの自宅があるなら、彼にそうしてもらうのも申し訳ないし。

考えたのが、以前みたいに車に乗り込む社長を前に、その場で挨拶して別れる方法だ。

夕飯に誘われない日は、そうしてお見送りしていたんだし、それはそれで間違いじゃないと思うんだけどな。

「いいから、乗れ」

手首を掴まれて、後部座席に連れ込まれる。

「な、何を……」

まるで社長の膝の上にスライディングしたみたいになって、慌てて身体を起こすと、背後で小杉さんにドアを閉められた。

「まだ茶番は続いているんだろう?」

……茶番劇ですか。

「祝賀会が終わったんですから、もういいのでは?」

「いいから。お前は黙って送られていろ」

不機嫌にそう言われしまったら、とりつく島もない。
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