臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「私が目の保養になるわけがないじゃないですか」

「いや? そうでもないぞ?」

おだてられたって何も出ないんだけど……。

考えていたら、社長が私の方に向き直るように座り直した。

マンションを通り過ぎた暗い道では、時々通り過ぎていく街灯に照らされるだけで、社長の表情は読みにくくなっている。

それでも、どこか笑っているような雰囲気だけは伝わってきていた。

「お前は、柔らかそうだ」

……柔らかそう?

「シルエットだけでも目の保養になるだろう」

これはアレか。私が社長を目の保養にしている事の意趣返しなのかな?

シルエットで、柔らかそうって……。

「お、親父入ってますけど、社長」

まるきりセクハラ発言じゃないか。

「まぁ、お前からすると34歳の男なんて親父だろうが。お前が生まれた時には、俺は小学生だぞ」

「学生の頃って、学年の差がハッキリしてますよね」

「そうだな。小学生の時には中学生が、中学生になると高校生が、随分と大人に見えたもんだが……」

社長は小さく笑って頷いている。

「自分が感じていた“年上”の年代になってみると、意外と“大人”になっていないもんなんだよな」

そうだなぁ。確かに小さい頃は制服に身を包み、学生鞄を持っている中学生が大人に見えた。

中学生になると、アルバイトを始めたり、お化粧に興味を持ち始める高校生たちが大人に見えて……。

高校生になると、華やかな私服と、少しお酒を覚え始めた大学生たちがそう見えた。
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