臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「美和……?」

見上げた社長の顔が、ゆらゆらと歪んで揺らぐ。

彼は驚いたように目を見開いて、それから慌てたような顔をして、いきなり私を頭ごと抱え込んだ。

「お前の酔い方は特殊だな。泣き上戸か」

「泣いてません!」

「どこがだよ。天邪鬼過ぎて、たまに困るぞお前」

「だから泣いてない……!」

……という言葉は、そのまま抱き寄せられて消えた。

「……社長、シャツに化粧つく」

「おお。口紅でもなんでもつけてくれ。ある意味男冥利だろ」

「洗濯物増えるだけじゃないですか」

「気にすんな。クリーニング出すだけだから」

ああ、やっぱりクリーニングに出すんだ。

スンスン鼻を鳴らしながら、暖かさにホッとしている自分がいて困る。
そして、その体温にじわじわと恥ずかしさがこみ上げて……。

悶え死ぬ!

でも、離れようとすると、社長の腕が邪魔をして離れてくれない。
しばらくジタバタしていたら、呆れたような飯村さんの声が聞こえた。

「解散かな?」

「そうだな。コレ、どうにかしなきゃいけないだろ」

「オーケー。じゃあ頑張って。泣いている女の子には優しくな?」

「うるさいな。さっさとどこか行け」

「はいはい。じゃ、帰ろうか、成田さん」

え。ちょっと待って。置いていかれるの?

慌てるんだけど、社長はますます私を自分の胸元に押し付けてくるから、抗議の言葉はもごもごと掻き消えてしまう。
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