臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「落ち着け、美和」

静かな声で囁かれて黙り込むと、人の気配が無くなって、遠くを走る車の音と、社長の心臓の音だけが聞こえてきた。

社長……ドキドキしてる。お酒が入っているからか、ちょとだけ速い鼓動。

心音って、聞いていると落ち着いてくるって言うけど、本当なんだな。

何だか心地良くなってきて、もたれかかると、いきなり抱きかかえられた。

「ひゃ!?」

新鮮な空気が顔に当って、涙の跡がひんやりする。気がつけばお姫様抱っこされていてギョッとした。

「しゃ、しゃちょお?」

見上げると不敵に笑った社長の顔。

どこか悪巧みしていそうな顔を見ながら、落ち着いていたはずの心臓がフルスピードで動き出す。

「少し呂律が怪しいな。醒めてきたようにも見えないが」

そんな事を言いながらも歩きだすから、余計に慌てる。

「見えなくて結構れす! 歩けますから、離して離して!」

「暴れると落とすぞ」

それは嫌だ。

思わずギュッと身体を硬くしてスーツのジャケットを掴むと、複雑そうな表情を返されてしまった。

「お前ね? さすがの俺も、女を放り出すようなマネはしないぞ?」

「わかりませんもん。社長たまに悪ガキになるから」

「うーん。それは否定しきれないから反論が難しいな」

それは自覚はあったんだ。
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