臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
そして目の前の男性は、高級なイタリア製のスーツと靴をさり気なく身につけて、数時間も居酒屋で飲んでいたとは思えないくらい、和やかに爽やかに座っている。

真夜中って言うより、どちらかと言うと清々しい朝に、自らの執務室といるのと変わりないかも……って、考えてみたら、それはある意味ですごいな。

「せっかく楽しんでいらしたのに、ご迷惑おかけしてすみません」

指先でコーヒーの紙コップを持ちながら、社長は不思議そうな顔をした。

「別に迷惑だとは思わないが。俺にも大学生だった時代があるからな。学生時代の飲み方ほど、無茶ではた迷惑なもんもないだろ?」

「大学生だった時代は、私は生真面目な学生してましたから。飲みにも誘われませんでしたし……」

わからないなぁ。と思っていたら、重々しく頷かれた。

「ああ。うん。何となく想像できるのは、リクルートスーツなお前を知っているからだろうな」

……動きやすかっただけなんだけど。

「それで、落ち着いたか?」

「はい。酔いも醒めてきたみたいです」

女が酔っ払うなんて、だらしないとか思われたかな?
でも今更かもな〜。社長に酔っ払い姿を見られたのは、これで二度目なんだよね〜。

「そうか。それなら泣いた理由を聞こうか」

座り直す社長を、思わず凝視してしまった。
< 216 / 255 >

この作品をシェア

pagetop