臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「待ってください。社用車手配します」

かろうじて持ってきたスマホをポケットから出そうとすると、それを取り上げられた。

「そんなもんはいい。行くぞ」

ぐいっと手を掴まれて、重役たちの執務室の前を社長は早歩きで、私は走るように通り抜け、ギョッとしている秘書課の皆の視線を浴びながらエレベーターに飛び込んだ。


社長は落ち着いた様子で地下のパネルを押し、手を繋いだまま呆然としている私を見下ろす。


「驚いてたなー」

……なんだろう。悪ガキにしか見えないこの人は。

「私が一番驚いてますから!」

叫ぶと、社長は目を輝かせながら口元を緩める。

「お前って、けっこう喧嘩っ早いだろ」

「誰がそうさせているんですか!」

「まぁ、俺だな」

そんな会話を交わして地下に着くと、社長は私の手を掴んだまま、一番奥に置いある、どこにでもあるようななんの変哲もない白い車に向かっていく。

そしていつの間に持っていたキーでドアのロックを外すと助手席を開けてくれた。

「……この場合、私が運転するのが秘書として普通ではないでしょうか?」

「ドライブは俺の趣味だ。人の楽しみ取り上げるつもりか?」

そんなもんは知らんって。
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