臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
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そして車が停まった場所にキョトンとして目の前の建物を見上げた。

白い二階建ての広大な建物。そこには“株式会社TONO”の文字。

「ここって、うちの工場ですよね?」

「その通りだな」

「視察なら視察と仰っていただければ、連絡しましたのに……」

「それじゃ意味ねーんだよ。今から“社長”が来るって言ったら、いろいろと隠すだろうが」

社長の言葉とも思えない言葉使いと冷たい視線を受けながらシートベルトを外す。


「抜き打ち視察をするのもどうかと思いますけど」

「その方が見えることも多いんだ。だいたい取り繕って張りぼての就業風景見て、何が必要かお前は判るのか?」

社長もシートベルトを外すと車外に出て、ぐるりと回ってきたと思ったら助手席を開けてくれた。


「……言っていることと、行動がちぐはぐですね」

「何がだ?」

不思議そうにする社長に溜め息を返してから車を降りる。

言ってくることは冷たく突き放すようなのに対して、行動は紳士的。

おかしな人だと思っただけなんだけど。これも言わぬが花かな。

営業所の建屋を見上げ、頭の中の知識を検索する。

ここって、うちの食品関連の事業の中でも、確か冷凍食品を取り扱っている場所だよね。

「社長お腹空いているのに、こんなところ視察来たら余計お腹空くんじゃありませんか?」

ぽそりと呟くと、驚いたような視線が降ってきた。
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