臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「……なんですか」

「驚いた。お前ここが食品関連の工場ってことは知っているのか」

「近郊の営業所や工場くらいは把握してますよ。全支店と全営業所を知っているわけではありませんが……」

それって普通の事でしょう?

「ふうん? まぁいい。ああ……気づかれたみたいだな」

社長が見た方向を同じく見ると、入口から白い作業着を着た50代くらいの恰幅の良い……と言えば聞こえはいいけど、ちょっと小太りの男の人と、ひょろっと長く見えるスーツ姿の男の子が飛び出してくるところだった。


「社長! どうしたんですか、ご連絡くだされば工場長も休暇を取りませんでしたのに」

恰幅の良いほうが慌てたように言いながら、ちらりと私を見て……二度見する。

うん。女嫌いの社長は有名だもんね。

……ここまでそれが浸透してるのか、なんか恐ろしい。

でも、社長はそれを気にした様子もなく軽くうなずいた。

「ああ。そうなのか。だが視察くらいは僕一人でもできる。これにも一応、ここの様子を見せてやろうかと思っていたし」

見事なまでの営業スマイルを見せながら社長が私を指差す。

……社長の営業スマイルなんて初めて見たかもしれない。

あの苦手だと言っていた女社長相手でも無表情だったくせに。

「西澤」

「え……あ、はい」

「お前はいい。ここの社食はケーキがうまいらしいから、お前はそれでも食って待っていろ」

あろうことか社長が私を“西澤”と呼び、私に向かって営業スマイルを見せてきた!

何? 何を企んでいるんだろう?
< 44 / 255 >

この作品をシェア

pagetop