私、今から詐欺師になります
 子どもの頃、こんな風な大人になりたいと思っていた想像図そのままというか。

 実際の自分は大きく外れてしまったが……。

 みんな男だとは気づかないらしいが。

 まあ、間近に手とか、素の部分を見ない限りわからないよなー、と思う。

「茅野ちゃんは笑ってる方がいいよ」
と玲は微笑み言ってくれる。

 その口調は、女というより、格好いい男の人、そのものなのだが。

「そうですよね。
 ありがとうございます。

 私が暗い顔してると家族や、事情を知る役員さんたちが心配しちゃいますもんね。
 だから、なにも考えないようにして生きてきたんですけど」

 立ち止まって考えないようにしていた。

 三年後には離婚してくれるという秀行の言葉が嘘だと知りつつも、それにすがって。

 そして、三年経った今、案の定、秀行は離婚してくれそうにはない。

 そのくらい共に暮らせば、離婚する気も失せるだろうと思い、そう言っていたようだった。
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