私、今から詐欺師になります
「そうだな」
と何故か穂積も頷いている。

 ああっ。
 ひどいっ、と思っていると、秀行が鼻で笑って言った。

「ほら、愛人にも見捨てられた。

 お前を扱うのは大変なんだ。
 途中で放り出したくもなる」

 じゃあ、貴方も放り出してください……。

 自ら、捨ててっ、と訴える仔犬のように秀行を見上げてみたが、何故か彼は笑っている。

「さっさと仕事なんか辞めて、家に居ろ。
 うちのお袋が、お茶を習いに来いと言ってたぞ」

「……すみません。
 このままずっと働きたいです」

 思わず、そう言ってしまう。

 別に秀行の母と上手く行っていないわけではないのだが、日々、義母の教室に通って、お茶をやるとか、そんな緊張感のある毎日を送りたくはない。

 そのとき、
「古島」
と呼びかけた秀行が、鞄から、ゴソッとなにか出そうとした。

 殺られるっ! と何故か省吾まで一緒に身構える。
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