私、今から詐欺師になります
「めんどくさくなったら、いつでもクビにしろ」
と秀行は本当に菓子折りを渡していた。

「それから、茅野。
 その服はどうした」
と朝とは違う茅野の服を見る。

「こ……これは、えーと」

 見まいとしたのだが、つい、視線の隅で、穂積を捉えてしまう。

 目敏くそれに気づいた秀行が言った。

 だが、
「社長が買い与えたのなら、まあ、制服みたいなもんか」

 帰りは脱いで帰れよ、と秀行はあっさり流す。

 しかし、最後まで脅すことは忘れなかった。

「……後で様子を見に行くからな。
 行くぞ、省吾」

 はっ、はいっ、と省吾は穂積に一礼し、慌てて秀行の後をついて行った。

 その後ろ姿を見ながら、穂積が呟く。

「賢い奴だな」
「え?」

「今のまま、お前を家に引きこもらせても、またなにか不満を抱いて騒ぎ出すだろうから。

 少し外で働かせて、気を散らせようという魂胆だろう。

 同じビルなら、見張ってられるしな」

「そうなんでしょうか」
と秀行が消えた方を見ていると、

「茅野」
と穂積が呼びかけてきた。






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