私、今から詐欺師になります
 



「茅野」

「おはようございます、社長。
 今日も一日、よろしくお願い致します」
と茅野は今日も深々と穂積に頭を下げる。

「なにか御用ですか?」
と顔を上げ、訊くと、

「いや、用というわけじゃないが。
 その……よく似合うな、その服」
と穂積は言ってくる。

「えっ。
 そうですかっ。
 ありがとうございますっ」
と茅野は喜んだあとで、

「じゃあ、昨日の仕事の続き、しますので、失礼しますっ」
と行こうとしたが、腕をつかんで止められた。

 なんだろう、と振り返ると、穂積は黙って、自分を見下ろしている。

「なんですか? 社長」
と言うと、

「いや……」
と言って黙ったあとで、言葉を選ぶようにして言ってくる。

「俺を詐欺で騙す話はどうなった」

 あー、それですか、と茅野は苦笑いする。

「ですから、穂積さんみたいな方相手に、詐欺とか申し訳ないかな、と。
 あっ、最初はこの人なら、騙していいとか思ってたわけじゃありませんよっ」

「じゃあ、俺以外の男を今度は引っ掛ける気か」
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