私、今から詐欺師になります
「……お兄ちゃんは職場でなにをしてるのかな?」

 ああいう人だとは思わなかったな、と思う。

 はっきり仕事と私生活を分けていると思っていたのに。

 女子社員をいいようにしようだなんて、公私混同も甚だしい、とつい批判的に思ってしまう。

「茅野ちゃんは、穂積を好きなの?」

「わ、わかりません。
 私、誰かを好きになったこととかないので」
と本当に戸惑っているように茅野は言ってくる。

 いや、そんな風に、今まで誰も好きになったことのない君が、この感情はわからないと言うのなら。

 それは、穂積を好きだってことだよね? と思ってはいたが、教えてやるつもりはなかった。

 茅野は俯きがちに、可愛らしく戸惑っている。

 なんか腹立ってきたな、と思う。

 僕も女装なんかしてなかったら。

 あのとき、茅野ちゃんとエレベーターで出会ってたら。

 そう思った瞬間に、腕をつかんで、引き寄せていた。
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