私、今から詐欺師になります
 



「もう~、なんだよ。
 長年のトラウマも振り切って男になってみたのに、僕なんか。

 ありがとうございますだよ。
 なんだよ、それ」
と焼き鳥屋のカウンターで横に座る省吾に玲は文句を言う。

 彼は指定された時間と場所に素直に来てくれていた。

「なんで僕に愚痴るんですか」

「いや、あのとき、あそこに居たから」
と言うと、

「もう~、どうせなら女装してきてくださいよ~」
と省吾は言い出した。

 お前も有村と同じかと罵る。

 冷酒のグラスをカウンターに叩きつけた玲は、省吾を振り向き言った。

「……じゃあ、キスしてあげようか」
「はい?」

「このままの格好で」

 玲の顔を眺めたあとで、省吾が言う。

「いやあの……違う道に目覚めそうなんでやめてください」

 なんで、敬語だ……。





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