この胸いっぱいの好きを、永遠に忘れないから。


名門校といわれる自分の母校に娘が合格したことで、両親も親戚も大喜びのドンチャン騒ぎだ。


私の指輪のことなど、誰も知ったことではない。






「……はぁ」


ため息が止まらない。





あの指輪のために私がどれだけ勉強を頑張ったか……。

こんな気持ち誰もわからないだろう……。


"指輪が欲しいから"なんて、くだらないと言うかもしれない。


それでも私には夢にまで見た、憧れの指輪だった。








私は後ろ髪引かれ、チラッと振り返る。


指輪を買った男の人と目が合った。


私は焦って目を逸らし、足早に店を出た。




どれだけうらやましそうな目をしてただろう……そう思うと、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなった。








受験は合格したが、気分の乗らない春休みを過ごすことになったのは、言うまでもない。




< 7 / 328 >

この作品をシェア

pagetop