この胸いっぱいの好きを、永遠に忘れないから。
名門校といわれる自分の母校に娘が合格したことで、両親も親戚も大喜びのドンチャン騒ぎだ。
私の指輪のことなど、誰も知ったことではない。
「……はぁ」
ため息が止まらない。
あの指輪のために私がどれだけ勉強を頑張ったか……。
こんな気持ち誰もわからないだろう……。
"指輪が欲しいから"なんて、くだらないと言うかもしれない。
それでも私には夢にまで見た、憧れの指輪だった。
私は後ろ髪引かれ、チラッと振り返る。
指輪を買った男の人と目が合った。
私は焦って目を逸らし、足早に店を出た。
どれだけうらやましそうな目をしてただろう……そう思うと、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなった。
受験は合格したが、気分の乗らない春休みを過ごすことになったのは、言うまでもない。