私に恋してくれますか?
部屋に入ると、左近さんと、桜井さんが心配そうな顔で私達を見る。

私は少し笑ってみせ、応接セットにトオルくんを座らせた。

「トオルくん、私がトオルくんを好きな気持ちは変わらない。
でも、今の私達のままでは、いけないと思うの。
私はここを出て、ルピナスでまた、働く。
ひとりで生活をして、お父さんに認めてもらう。
それからトオルくんと一緒にいられるようになる。
何もかも放り出して一緒にいても、どこにもいけない。
週末には会えるよ。
恋人をやめるわけじゃないんだから…。」と私が笑うと、

「ピーコは俺と離れて平気なのか?!」とトオルくんが声を荒げる。

トオルくん、ちっとも怖くないよ。
声が泣いてるみたいだし…。

「…平気じゃないよ。
でも、大人にならなくちゃ…
トオルくんもいつまでも家族から逃げていられないでしょう?」

「ピーコは俺と一緒にいてくれないのか?」とトオルくんは悲しい声を出す。

「私はトオルくんが今まで付き合ってきた
直ぐに別れていくようなオンナノコとは違う。
身体は離れても心はトオルくんと一緒にいる。
大丈夫。」
と私は泣き声にならないようにトオルくんに笑いかける。

「…それってさあ、遠距離恋愛?」と考え込んでから、トオルくんがやっと笑った。

「君達は大袈裟すぎるぞ。
まだ別れろと言っているわけじゃない。
付き合いはじめの適正な距離になるだけだ。
雛子さんは覚悟が出来てるようだし、
君も、雛子さんにふさわしい男になってくれ。
仕事でも、プライベートでも。
私が社長を説得したくなるような…。」と水城さんは呆れた声で言って、席を立った。



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