私に恋してくれますか?

実家にて。

「いらっしゃい。」と言った母は、相変わらず、美しく、おっとりとした様子だ。
ブルーのバラの花を散らしたワンピースがよく似合う。

「雛子、元気だった。」と私をそっと抱きしめ、頬を撫でる。
昔からの仕草にホッとする。

「足立先生、お久しぶりです。雛子がお世話になっています。」と挨拶し、

「五十嵐さん。トオルさんでいいかしら。
子供の頃にあっていますね。
背が高くなったわ。
如月と同じくらいかしら。」とトオルくんを見上げ、

「お二人ともようこそ。
雛子のボーイフレンドが2人も来るなんて日が
やって来るなんて思わなかったわ。」と、ニコニコ笑ってリビングに案内した。


ボーイフレンドねえ。と足立先生がクスクス笑う。

応接室ではないところが、親しい人との集まりを思わせて、
私は母の心遣いを嬉しく思った。

「母がリビングに案内するのは
親しくなりたいって思っているってことです。」と小さな声で言うと、
なぜ、呼び出されたのかわからない、緊張気味のふたりは少しホッとした表情を見せた。
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