私に恋してくれますか?
第3章 春を待つ季節。

さらに、新しい出会い。

お正月は元旦だけお休みで
2日から仕事に戻った。
輸入雑貨店は海外と取引が多いので、
日本のサラリーマンのように3が日がお休みってわけではない。
(私の勤めていたルピナスも順番にお休みをとって元旦も営業していたし…。
特に驚かないけど)


元旦はトオル君と2人で
静子さんが用意してくれたお重に詰められたおせち料理を食べ、
(料理の腕が上がったら、おせちにも挑戦したい。と心の中でだけ思っておく。
トオル君の前で口に出したら鼻で笑われそうだし…。)
近所の神社に初詣に行った。
私は家族の幸せと、
トオル君は商売繁盛を祈った。

お守りを売っているところで、
おみくじを引くと、
私もトオル君も『末吉』で、

「ピーコと一緒にいると大変ってことか?」と眉をひそめたので、
「すみません。」と頭を下げると、
「冗談だよ。ピーコといると面白いし。枝に結んで、もう一回引く?」と聞くけど、
「『後から、吉』ならそれでいいです。」と私がおみくじをたたんでお財布に入れて笑うと、
「あ、そう。」と笑って、お守りに目をやり、

「ピーコ、健康のお守り買ってやるよ。
きっと、実家を出て無理をしてるって思うから。」とトオル君がお守りを手に取ったので、

「…私もトオル君の健康を祈ります。」と私もお守りを手にすると、

「誰かに健康を祈られるってなかったかも…」とクスクス笑ってお互いのお守りを買って贈り合った。

お揃いのお守り。

私はトオル君から預かっている家の鍵に付け、
トオル君はスマホのカバーにたくさん付けたキーホルダーにさらに加えた。
(トオル君はすぐにスマホを迷子にするのでガシャガシャとキーホルダーを付けている。)


帰り道、トオル君は私に
「今晩は、ピーコの怪しい飯じゃなくて、静子さんのおせちで酒が飲める。」
と憎まれ口を言って、私にバシバシと背中をたたかれ、
「暴力反対」と私の手を握って機嫌よく道を歩いた。

トオル君の手は暖かい。
私は買ったばかりの手袋をコートのポケットにしまった。
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