乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)

 そして、ここからが雅輝たちが考えたシナリオだ。社長が来ないと思っている人たちへサプライズだ。

「オフィスーRーラポールの社長から、お礼と報告がございます。」

 その言葉に、みんながざわめき、結城親子、専務は顔を見合わせ、焦っている。

「社長の連条です。長い間みんなには心配をかけました。本当にありがとう。私は、会社を設立した際、人との絆を大切にしたいと思い、ラポールと名付けました。」

 みんなを見渡しながら、丁寧に言葉を紡いでいる。

「そして、やはり絆と言うのは、根っこの方で繋がっているのだと感じました。このラポールの設立に関わってくれた私の友人クリスフォード・アラン氏を紹介します。」

 社長の声と同時に、アランが壇上へ歩み出てくる。

 その社長の言葉をきいて、焦っていた結城親子の顔がどんどん青ざめて行くのが分かる。

「結城さん、これはどういうことですか?今の話が本当なら、彼がクリスと言うことになりますよ?結城さん!!」

 専務があやめの父を問いただしているのが分かる。

 あやめも震えた。社長はここには来ないはずで、本当のクリスが表れることなんてないと思っていたからだ。

 逃げようと、その場から走り出そうと考えて振り替えると、そこに悠一と白愁先生が立ちはだかった。

「まだパーティーは終わってませんよ?結城さん。」

 逃げ道を塞ぎ、シャンパンを傾けながら、"ラポールの未来に乾杯してくださいね。"と悠一に言われ、その笑っているのに、目が笑っていない表情に、あやめは息を飲んだ。

 横では、事情をあまり詳しく知らされていなかった専務があやめの父をまだ、問いただしていた。

「みなさん、はじめまして。クリスフォード・アランです。社長とはもう40年来の友人になります。絆も深く、また、彼とは縁もあるようで、何も知らない娘がお世話になり、親子ともども彼にはお世話になりっぱなしです。」

 "娘"、"親子"と言う言葉に、マスコミが反応し、ざわめき出したのだ。ラポールは今回のホールのことで、世界から注目をされており、世界各国から、マスコミが、押し寄せており、もちろんクリスフォード・アラン氏の子どもの存在を追いかけて来たマスコミもいた。

 だから、アランの言葉に驚愕したのだ。
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