乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
ふたりでの生活
 ふたりでの奇妙な同居生活が始まり、3日目。

 アトリエーMIYABIーの1画に、小さな事務机を準備してもらい、自分の部屋から持ってきたパソコンとスケッチブックを広げて、杏樹は、企画書作りで頭を捻らせていた。

 アトリエの電話が度々鳴るため、部屋にこもって企画書作りをしていた杏樹は思いきって、アトリエ内で作業をしていいかと訊ねたところ、快く、アトリエの1画に作業スペースを作ってくれた。

 そのスペースでの作業は、とても捗り、行き詰まると、周りのぬいぐるみ達に目をやり、癒され、杏樹にとっては素敵な空間になりつつあった。

 ここでの生活に杏樹はすっかり慣れ初めていた。

 朝食・夕食は雅輝が作り、軽食が得意な杏樹は軽めに昼食を作る。
 
 日中は、雅輝は作業室にいることが多く、杏樹も有休だからといってどこか行くわけではないため、アトリエで企画を練っていることがほとんどだ。

 作業に集中してしまう雅輝に、会社と同じように10時と15時にコーヒーを入れたことで、その時間に二人で休憩を取ることが、定番になってきた。

 その定番の時間が、ふたりでアイディアを交わしたりと、杏樹には、とても心地よい時間であった。

 ふと時計を見ると、時計の針は10時をさしていた。

「今日は、ミルクティーかな。」

 立ち上がりながら、そう呟くて席を立つと、アトリエの入り口が開くと、モデル風の男性が入ってきた。

「あっ、いらっしゃいませ。」

「あれ?人、雇ったの?…あっ雅輝はいる?」

「います。えっと、今からちょうど休憩なので、良かったら奥にどうぞ…。」

「じゃ、美味しいエクレア買ってきたから、良かったらどうぞ。」

 杏樹は、男性からお菓子屋の箱を受け取り、バタバタと雅輝の作業室に向かうと、声をかけた。

「雅輝さん、お客様ですよ?」

「ん。休憩かな?…客?…誰?」

「えっと…モデル風のイケメンで名前?聞いてません…。」

 そう項垂れると、後ろからひょこっとその男性が顔を見せた。

「よっ!!雅輝の好きなエクレア持ってきたよ!」
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