乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
 ただそう言葉にする杏樹に呆れ顔の絵梨はため息をつく。

「そうだねって、難波さんが途中入社してきた時も、あいつのために枕営業させられそうになったりとか、あいつに襲われそうになった時も、穏便に済ませたよね?今回のは悪質過ぎる!あの子なんて、難波さんの気持ちを留めるために、必死で可笑しいし…。」

「難波さんは、周りを上手く利用する男よ。皆の何枚も先手をうつ男だよ。絵梨とかに被害がないなら、私は大丈夫。」

ートントンー

 そんな時、ノックをして雅輝の声がした。

「我妻君が来たよ。」

 絵梨が、"はい、今、行きます。"と、自分の荷物をまとめだした。

 杏樹は雅輝と一緒に絵梨を見送りに出る。渉が入り口に立っているのが見える。

「じゃ、杏樹。有休明けにね?連条さん、杏樹をお願いします。」

「ちゃんとお預かりします。安心してよ。」

 そう爽やかな笑顔で絵梨に答えた。杏樹は、ふたりを笑顔で見送った。

 
 

「なぁ。絵梨。あの店に見覚えのある顔、いなかった?」

 渉が神妙そうな顔で絵梨に聞いて来るので何事かと顔をしかめると、言いにくそうな渉がいる。

「何よ?」

「七瀬さんは、ラポールの人事部課長。」

「えっ?ラポールの?」

「ちなみに連条さんは、ラポール社長の一人息子。」

「えっ!?…でも、息子ってラポールじゃ働いてないよね?息子は会社とは縁がないって話じゃ。それにメディアには出てこないじゃない。」

「そうなんだよ、息子のしたいことをさせたいからって会社とは関係ないって社長は言ってるんだけど、それがそうでもないみたい。」

「何で渉がそんな事知ってるのよ?」

「新聞社の友達に聞いて…。七瀬さんはすぐに気がついたんだよ。」

 絵梨がびっくりして渉を見ると、渉はため息をついた。

「何かしら大きな動きがあるみたいだ。その一つが例の企画らしい。」

 二人の間に言い知れない澱んだ空気が流れる。二人はお互いの手をギュッ握り締めた。
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