乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)

 あやめが出ていくとすぐに安堵感に包まれる。台風が去った後の様な空気が漂い、雅輝が、"みんな、迷惑かけたな。"とボツりと話す。

「本当やな女!」

 五嶋があやめが去っていった方を見ながら言う。

「何がラグジュアリースイートよ!!親のコネでしょ?」

 どうやら態度も気にいらないようだが、ラグジュアリースイートっと言う言葉も気に入らないようだ。ラグジュアリーなんてって言いながら秘書課に戻っていった。

「杏樹ちゃん、すごい!私、あの人にあんなに言えないもん!」

 なずなが杏樹を尊敬の眼差しで見てくる。

「…だって、…ボス、髭さわってたし…。」

 雅輝の方をチラッと見ながら杏樹は答えた。

「それに、仕事の邪魔だし…何より…。」

 そこで、杏樹は自分は何を言おうとしてるんだろうかと、考えた。

(何より、雅輝をあんな風に誘う女性がいることを知りたくなかった…。)

「何より…何?」

 なずなに聞き返されると思ってなかった、杏樹は、曖昧に濁したのだった。



 週末の今日、仕事後、杏樹がなずなとともに向かっているのは、絵梨と待ち合わせしている、スペインバルのお店だ。

 辞表を杏樹が出してからしばらく立つのに、絵梨との予定が会わず、やっと予定が会ったのだ。一度、絵梨となずなはアトリエで会っているため、三人でご飯に行こうと言う流れになったのだ。

 赤と黒を基調としたスペインバルは最近若い女性には人気が高く、絵梨と一度行きたいねと話してた場所だ。

 入り口で待っていた絵梨と中に入り、スペインの地ビールで乾杯した後、話は仕事ではなく、杏樹と雅輝の話になる。

「で、連条さんは、ラポールの副社長で実は社長の息子ってのはもう分かってるの!私が聞きたいのは、二人はどうなってるの?それが聞きたいの!!」

 まだ、先駆けの1杯しか飲んでない絵梨がいきなり切り出してくる。

「どうって、会社じゃ上司と部下。家じゃ今までとおりどけど…。」

「今日の杏樹ちゃん見せたかった~!」

 なずなが絵梨に今日の出来事を話す。途端に絵梨が意地悪そうな顔をし杏樹に訊ねてくる。

「ふ~ん。仕事の邪魔だし何よりなんて言うつもりだったの?」

「……。」

「杏樹?」

「嫌だったの…言い寄られる姿見るのが…。」

 絵梨となずなから目線を逸らしながら小さな声で呟く。

「何で嫌だだったの?」

「…だから!!……好き…なの。」

 消え入りそうな声だがはっきりと自分の気持ちを認めた杏樹に二人はニンマリと笑う。
 
 その後、たっぷり恋愛初心者の杏樹に対して色々と抗議をしたり、雅輝のどこが好きなのか根掘り葉掘り聞かれた杏樹は、どんどんお酒を飲まされた。
< 58 / 116 >

この作品をシェア

pagetop