乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
ー美術館  テディベア展ー

「雅輝さん!これは、めちゃくちゃ可愛い~ウェディングベアーですよ!」

「おお!めちゃくちゃ可愛い!!」

 二人で先程からはしゃいで見ているのは、テディベア展のウェディングブース。純白のテディベアからパステルカラーのテディベアがドレスアップして、飾られているコーナーにずっと入り浸っている。会社から距離があるため、雅輝も素を出して杏樹と楽しんでる。

 副社長として頑張る雅輝は、家でも会社でも仕事のことばかりで息抜きをしていないように杏樹は感じていた。悠一が言ってたように、本人が決めた道なんだろうが、やはり笑顔が少なくなり、はりつめた感じが雅輝から出ていた。
 今日の雅輝は、ずっと心から笑っていて、杏樹はこの時間を大切にしたいと思っていた。

「俺のうさぎや犬に着せたらもっと可愛いだろうな~!」

「言うと思った~!」

「いつでもいいので、私にも作ってくださいね!」

「あぁ落ち着いたら、犬でもうさぎでも!」

 そんなはしゃいでる二人を遠くから睨むように見ている女性がいた。

 たまたま、父親が貰ってきた美術館の無料チケットでテディベア展にきていた、結城財閥のあやめだ。

 あやめは初めてここで雅輝を見たとき、二度見してしまった。スーツ姿ではないがよく笑い楽しそうにしている姿に。自分の前とは全く違う、素の姿に魅せられたのだ。

 しかし、声を描けようとした瞬間、一人でないことに気がつき、その相手を見て嫉妬した。企画室で見た、自分に意見したあの女だ。

 あやめは手を握りしめた。

 自分が雅輝を手に入れるために協力してくれると言った、ラポールの専務から杏樹のことを聞いたとき、直感で雅輝の想い人は彼女だと想い、会社で会った時にその思いはさらに強くなった。

 でも、こんなに早く二人がいい感じになってしまうとは考えてなかったあやめは、握りしめた手が震えるのに気づき、本当に雅輝が好きなんだと想い知らされる。

 そんなあやめの気持ちとは裏腹に、二人は手を繋ぎ楽しそうにしている。

「私、諦めないから…。私が相応しいんだから。」

 その言葉は二人に届くことはなかったが、不穏な影は徐々に二人に近づいてきていた。
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