乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
ふたりと激動の日々の始まり
 素敵な週末を過ごした杏樹と雅輝は、二人で暮らす上で新たなルールを作った。
 
 行ってきますとおやすみのキスをすること。
 なるべく寝食をともにすること。
 交際してることを隠さないこと。

 どれも雅輝が杏樹を好き過ぎて約束させたことで、独占欲の現れだが、杏樹も別に嫌なものはなかったため、すんなりと承諾した。

 週明け、公表せずとも一緒に出勤してきた二人を見て、みんなの噂の的になったのは言うまでもなく、批判的な声は全くなく、副社長が好きな人と結ばれて良かったとの声ばかりだった。

「あの女と婚約せずに、立花さんと付き合ってくれて良かったわ!!」
と、わざわざお祝いを言いにきた五嶋は、お赤飯を持ってきて二人を苦笑いさせた。

「悠ちゃん~やっぱり私と絵梨ちゃんのおかげだよね!」
「それはきっかけにしか過ぎないだろ?いずれくっついてたよ。」
 なずなと悠一の二人は朝からずっとこんなことを言っている。

「杏樹おめでと~初カレゲット!処女脱出!」
 絵梨は電話口でそんなことをいっていた。

 二人はみんなからの暖かいお祝いを受けるが、昼過ぎの社長室の電話で一転する。

 社長室からの電話を雅輝が受け、渋い顔をして企画室を後にしたのだ。

「なんかあったんですかね?」

 ゆずるが机から身をのりだし、入り口を見ながらみんなに尋ねてくる。杏樹もなずなも首を傾げてるが、直哉がボソッと呟いた。

「…株を専務が買い占めているらしい。」

「「「え…!!株を?」」」

 三人の声が重なる。

「社長が23%、七瀬税務士が22%、専務が15%、結城財閥が8%あとはフランスの会社が10%個人投資家が22%って割合なんだけど、今、専務が買い取ってるのが個人投資家からのものなんだよ。」

「それって株主総会でもやるつもり?」

 直哉の説明にゆずるは首を傾げる。

「でも、ざっと計算しても専務側が越えることはないはずよ?フランスの会社は、社長の古い知り合いらしいから、専務につくことはないと思うよ!」

 なずなが持ち前の計算力を使い、そう話した。

「そこじゃないよな、問題は。専務が個人投資家から全部買い占めて、結城財閥の株が専務の手に渡った場合、同等になるだろ?そしたら、今、持ってる何らかの決定権が専務に渡ると言うことだよ。分からないのか?」

 直哉にため息をつかれ説明を受け、なずなとゆずるがムッとしている。
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