乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)

　社長室に呼ばれた理由は分からない。
　でも、そうなったら大変だねと他人事のような会話をして仕事に集中することになったのたが、事態は思わしくなかった。

ｰ社長室ｰ

「はぁ？ふざけるな！！」

　雅輝の怒涛が響き渡る。社長と悠一も難しい顔をしている。

「結城あやめが筆頭株主になるのも時間の問題だな…。」

「あの専務と令嬢が黙ってるなんておかしいと思ったんだよ。」

　社長と悠一の会話に、雅輝は髭をいじりながらイライラした様子で尋ねる。

「フランスの会社はどうなんですか？」

「それは大丈夫だよ。私の友人たちだから、専務に寝返ることはないよ。」

　そこでまた、三人は深いため息をついた。

「筆頭株主になった場合何が予想される？」

　社長が悠一と雅輝がいるソファーに座り直しながら聞いてくるが、二人ともだんまりだ。

　多々想像できるだけに、雅輝の気持ちは先程までの高揚したものではなくなってしまった。

　野放しにしていたわけではないが、専務が持ち株の半分を譲渡する何て考えていなかった三人は、専務の意図も分からず、さらにはあやめがどう出てくるかは考えもつかない。

　でも、どうにかしないと行けないのは事実である。

　経営に口出して来るだろうか、人事に口出ししてくるだろうか、そう思っていると社長室の電話がなった。社長が一瞬険しい顔をして、電話をとり、二・三言話して受話器を置いた。

「ウェディング企画室に結城あやめを通したとの連絡だ、受付から。」

　社長が、雅輝に早く戻れと促し、雅輝は早々と社長室を出ていく。そのあとを悠一は追いかけた。ウェディング企画室も社長室も同じ階だが距離があるため、二人とも走りながら話している。

「まだ、筆頭株主にはなってないと思うけど。」
「幸せな気分が台無しだ。あの女は、本当に強かで好きじゃない。」

　二人が廊下の角を曲がった時に、ウェディング企画室の前に五嶋が立ってのが分かる。

　雅輝と悠一の姿に気がつくと、"早く、来てください！"と急かすように手招きされる。