乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
「五嶋さん、どうしたの?」

 興奮しきっている五嶋は、口をぱくぱくしながらウェディング企画室の中を指差して、その中にいる人物をキッ睨み付けている。

 中を見ると、パソコンを触ろうとするあやめを制するなずなと杏樹の姿とゆずるが止めに入ろうとすると姿が見えた。直哉が雅輝たちに気がつくと、その視線をたどったあやめと、目があった。

「結城さん、ここは出入口禁止ですよ?」

 雅輝がそう言いながら中に入ると、パソコンから離れ、パァッと笑顔になり、雅輝に駆け寄っていく。

「あやめと呼んでください。」

 駆け寄ると手を握りしめて上目使いで言い寄る。

「手、離してください。」

 ピシャリと言われ、渋々応じる。

「ここで何をしてるんですか?あなたは、部外者ですよ。」

「いいえ、もうすぐ筆頭株主になりますから、部外者ではありませんわ。」

「社員すらここには近寄れないのに、株主だからとここに入るのはおかしいですよ。分かりませんか?結城さん。」

「いいえ、分かりますわ。でも、婚約者なんですもの。知る権利があります。」

「はぁ!?」

 あやめの言葉に大きな声を出したのは、雅輝でも杏樹でもなく廊下にいた五嶋だった。みんなも怪訝な顔をあやめに向けるがあやめは自信満々な表情を見せ、雑誌を雅輝に渡す。

 そこには、以前あやめとホテルでランチをした時の写真が映っていた。雅輝は愛想笑いだが見る人が見れば、笑顔で会話している感じに見える。

ー結城財閥の婚約者は、強面イケメンはラポールの新副社長!!ー

と、見出しには書いてあり、よく見ると、筆頭株主だとか、結城財閥は婚約を認めてあるとか書いてある。

「事実じゃないことばかりだな。」

直哉が雑誌を見ながら呟く。

「いいえ、事実になるわ。来週には筆頭株主になるのは間違いないし、父も婚約者と認めてますもん。」

 あやめが持っていたのは、来週発売の雑誌だったのだ。

「これ、来週発売のものなんです。発売しないよう手を打つことも出来ます。その代わり、私も企画に参加したいわ。どうされます?」

 妖艶に微笑むあやめに、ため息をつく雅輝、固唾を飲んで様子を見守るみんな。

 長い沈黙の後、雅輝が口を開く。

「メンバーに迎えませんよ。」

 低い声に鋭い視線が雅輝の強面の顔をより、強調する。

「すごく迷惑です、正直。私、恋人おりますから、誤解されると本当に迷惑です。でも、だからと言ってあなたをメンバーに迎えるつもりは全くありません。」

「じゃ、これは発売することになりますね。」

 あやめも負けじと応じる。その姿はすごく必死に見える。
< 67 / 116 >

この作品をシェア

pagetop