乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
 あやめの発言に、今まで黙っていた雅輝が口を開く。

「そう言うことを口にするなんて、君とは元々、わかり会えないみたいだ。失礼するよ、行こう悠一。話の続きがある。」

 悠一を引き連れて出て行こうとすると、一瞬、結城親子の様子が目に入る。あやめの取り繕う笑顔に、父親の煮えたぎった顔。だが知らないふりをして二人は部屋を後にした。

 部屋を出て、廊下の角を曲がろうとした所で、呼び止められる。

「待ってください!!」

 走りながら必死に訴えるような眼差しで雅輝を捕らえている瞳は、うっすらと涙目に見える。

「待ってください…。」
 
 近くまできて、すがり付いてくる。

「私は自由になりたいんです。私は、身寄りがなく父に引き取られました。私は、会社の道具でいいんです。ただ、自由になりたい…だから、子どもだけでもいい、欲しいんです…。」

 必死にそんなお願いをされても、雅輝も悠一も不愉快な顔しかしない。それでも、同じことを訴えるあやめに冷たい視線を送る。



 その一方で、父親二人はさらに腹の探りあいをする。

「……連条社長。ここだけの話なんですがね、あやめの本当の父親は画家なんですよ。売れない画家だったんですが、あやめを引き取るとき、施設の職員から、伺ったんですよ。あやめの父は、自分の絵の片割れを持つ男と、子ども達を結婚させようと話していたと。………あの、後ろに飾ってある絵によく似てるんですよね。」

「………!!」

 あやめの父の目線の先にある絵を見る、連条社長の顔は驚き、目を見開いた。

「見に覚えある話ですよね。……本当は私はあんなひどいこと、あやめに対して思ってませんよ。本当は、幸せになって欲しい。それに、父親の願いも叶えてあげたい。」

「………。」

「では、いいお返事お待ちしてます。」

 言いたいことだけ言って、あやめを呼びつけ、チラリと三人の顔を見て、含み笑顔をし車に乗り込んだ。

 連条社長のあの顔をみて、噂で聞いていたことの信憑性が増した。それだけで、上機嫌のあやめの父は、足を前の座席の上にドカンと乗せ、高らかに笑った。

「あやめ、風は追い風だ。」

「お父様も悪い方だこと。」

「あやめも中々な演技だった。」

「まぁ、お父様たら。私、どうでもいいの。彼が手にはいれば。」

 二人は車の中で和やかに話す。
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